マッセナLABがH.モーザーとチームを組み、限定版のエンデバー・クロノグラフ コンパックスを発表した。

モーザーのクロノグラフと聞くと、私はストリームライナーを思い浮かべる。これはフライバック機能を備えたアジェノー社製クロノグラフムーブメントを搭載した、インダイヤルのない独特なレイアウトが特徴だ。クロノグラフ秒針と分積算計がセンター針に配置されており、このコンプリケーションを現代のカタログに取り入れるためのモーザーらしいコンテンポラリーなアプローチとなっている。驚くべきことに、今日までモーザーの現行ラインナップには、複数のバリエーションがあるストリームライナークロノグラフのみがクロノグラフモデルとして存在していた。

ストリームライナー クロノグラフは、堂々とした現代的なデザインが特徴である。

Geneva Watch Daysで発表された、アルビスホルン×マッセナLABが手がけたマキシグラフ。

モーザーとスタジオ・アンダードッグがコラボレーションしたモデルもGeneva Watch Daysで公開された。

今回の新たなコラボレーションとして、マッセナLABがH.モーザーとチームを組み、限定版のエンデバー・クロノグラフ コンパックスを発表した。モーザーとマッセナLABはどちらもコラボレーションの経験が豊富で、特にヴィンテージデザインや複雑機構に関するものには定評がある。8月のGeneva Watch DaysでマッセナLABは、アルビスホルンと協力して1930年代風の現代的なレガッタクロノグラフであるマキシグラフを発表し、大成功を収めた。一方モーザーもスタジオ・アンダードッグとコラボし、パッションフルーツをイメージした2種類のダイヤルを製作した。

エンデバー・クロノグラフ コンパックスでは、両ブランドが1940年代のモーザーのクロノグラフからインスピレーションを得たとしつつ、モーザーの現代的なカタログにあるミニマルなデザイン言語と対比させることを試みている。インターネットでこれらの参考モデルを探した結果、有力な情報は得られなかったが、私が確認したいくつかの例は1940年代から50年代のほかのヴィンテージクロノグラフとスタイルが一致しているように見えた。このコラボではヴィンテージ風のダイヤルに、3時位置にスモールセコンド、9時位置に45分積算計を配置した伝統的なふたつのインダイヤルレイアウトを採用している。文字盤の大部分はタキメータースケールが占めており、通常の“タキメーター”ラベルの代わりに“Kilomètres À L’Heure”という表記に置き換えられている。私が調べた限りではヴィンテージウォッチでこの表記が使われた例は見つからなかったが、これはフランス語で“Gradué Pour 15 Pulsations”などのパルススケールを示す例が多いことから、その発想を巧みにアレンジしたものだと推測している。

フランス語のパルススケールが記載されたパテックの130。

1950年代のH.モーザーで、類似したロゴが見られる(Shuck The Oyster提供)

このコラボレーションダイヤルで私が最も気に入っているポイントは、1947年のモーザーロゴを採用したヴィンテージロゴが印刷されている点だ。このロゴは1947年のモーザーロゴのバージョンから採用されたもので、現行のモーザーウォッチでは見られない(ヘリテージコレクションでさえ採用されていない)。こうした細やかな追加要素が、このコラボレーションに魅力を与えている。

モーザーのファンキーブルーカラーは、モダンなモーザーを感じさせる要素のひとつだ。今回はグレーがかったブルーフュメ仕上げのサンバースト効果が施されている。これはいくつかのモデルで見られるものだが、今回はほかのモデルに比べて実物のほうがやや暗めに見える。これはダイヤルの暗いグラデーション部分が中央に近いところから始まっており、タキメーターの両リングが文字盤の最も暗い部分でシャープなコントラストを描いているためだろう。鮮やかすぎず、控えめで、モーザーのカラーのなかでも特に落ち着いたトーンのひとつだ。ヴィンテージにインスパイアされたこのモデルにぴったりでありながら、現代的なモーザーらしさをしっかりと感じさせる。明るい光の下だと文字盤の色彩は強くならないが、サンバースト効果が非常にドラマチックで、暗い部分に対して明るい白やグレーがかったブルーの光線が大きく広がっている。

私は以前から、モーザーのサンバーストダイヤルはその仕上げにおいて最高クラスだと思っている。通常のサンバーストダイヤルは明るい日差しの下だと、ブラッシングの強さや色の鮮やかさが原因で安っぽく見えてしまうことがある。だがモーザーはそのバランスを見事に保ち、屋内の照明ではダークな雰囲気を、屋外ではダイナミックな表情を見せてくれる時計に仕上げている。

最近の多くのコラボレーションで見られる動きとして、この文字盤にも夜光がたっぷり使われている。リーフ針にはスーパールミノバが塗布されており、さらに文字盤の印字部分もすべてスーパールミノバで仕上げられている。数字、タキメータースケール、インダイヤルの目盛りなどもすべて同様だ。文字盤に使用されたスーパールミノバはわずかにグリーンがかったトーンで、ファンキーブルーの冷たい印象のダイヤルと組み合わせることで、時計全体にクールな配色をもたらしている。マッセナLABとモーザーが、より暖色系のヴィンテージスタイルのスーパールミノバを選んでも驚きではなかったが、このグリーンとブルーの組み合わせはより一体感があり、まとまりのあるデザインに感じられる。

現代のモーザーの流れを汲む要素として、このクロノグラフはスティール製のエンデバーケースを採用している。彫刻のようなケースサイドと、シグネチャーであるコンケーブベゼルが特徴的なデザインだ。ムーブメントの上にはデュボア・デプラ社製のクロノグラフモジュールが搭載されており、そのため標準的な時刻表示のみのエンデバーよりもケースが大きくなっている。ケースの直径は41mm、高さは13.3mmだが、実際につけてみるととても快適だった。これにはいくつか理由があると思う。まず、彫刻的なケースサイドが時計側面の横顔をすっきりと見せていること。さらにコンケーブベゼルは、より伝統的なベゼルと比較した場合、上から見た外観をコンパクトに見せる効果がある。なによりダイヤルが非常に賑やかで、ヴィンテージクロノグラフに見られるような(より小さな文字盤に多くのスケールや印字が詰め込まれた)デザインを思い起こさせる。今回のモデルではタキメータースケールがかなりのスペースを占めているため、文字盤中央の印字がダイヤルを小さく見せている。文字盤が賑やかで大きめな時計は、腕につけると意外と小さく感じることが多いのだが、このモデルも例外ではない。

時計の内部でデュボア・デプラ・モジュールを動かしているのは、モーザーの自社製Cal.HMC220だ。このモジュールのクロノグラフ操作は簡潔かつ明瞭だが、特に際立った特徴はない。双方向巻き上げシステムのローターにはH.モーザーの刻印が施され、ムーブメントプレートに施されたモーザーストライプと対照的に目立つよう、ダークグレーで仕上げられている。シュトラウマン®ヒゲゼンマイ(ダブルではなくシングル)が2万1600振動/時で動作し、パワーリザーブは約3日間。ムーブメントとサファイアクリスタルのシースルーバックの周囲には、コラボレーションを表す刻印と、100本限定であることが示されている。

エンデバー・クロノグラフ コンパックスは、クーズーレザーのストラップとサイン入りのピンバックルが付属しており、100本限定で販売され、価格は447万7000円(税込予価)となっている。本作はモーザーにとって初の現代的な2インダイヤルクロノグラフとして注目されているが、デュボア・デプラ製モジュールを採用したクロノグラフとしては価格がかなり高い。同じ自社製HMC200ムーブメントを搭載した標準的なパイオニア センターセコンドは231万円(税込)で販売されている。もちろん100本限定という少数生産により、カスタムダイヤルやクロノグラフモジュールのような高価な部品が価格に反映されているが、それでも約2倍の価格差が100人の顧客にとって価値があるのかは疑問が残る。

マッセナLABとモーザーが、ヴィンテージ感覚を現代のモーザーと巧みに組み合わせた点は評価に値する。だが1本あたり約450万円という価格で、100本の販売がどれだけ早く進むかが鍵となるだろう。マッセナLABとモーザーの強みは、どちらも顧客層をよく理解し、満足させている点にある。おそらくこの価格設定は、両ブランドが私よりも顧客をよく知っていることの証だろう。ともあれこの時計はよくできており、ウィリアム・マッセナ(William Massena)氏がモーザーの慣れない領域の美学に挑戦したことが、このプロジェクトにぴったりと合っている。現代のモーザーのラインナップにはほかに見当たらないモデルのため、欲しいならクレジットカードの準備をしておくといいだろう。

H.モーザー×マッセナLAB エンデバー・クロノグラフ コンパックス。直径41mm、厚さ13.3mm。ステンレススティールケース、サファイアクリスタル、シースルーケースバック、“M”のサイン入りリューズ。ファンキーブルーのフュメダイヤルにサンバーストパターン、1947年当時のH. Moser & Cie.ロゴを採用。スーパールミノバを施したリーフ型時・分針、スーパールミノバによる文字盤の印字。自社製Cal.HMC220にデュボア・デプラ製クロノグラフモジュールを搭載、2万1600振動/時、51石、約3日間パワーリザーブ。クーズーレザーストラップ、モーザーのサイン入りスティール製ピンバックル付き。世界限定100本。価格は447万7000円(税込予価)。

A.ランゲ&ゾーネ ダトグラフ・ハンドヴェルクスクンスト

ダトグラフ・ハンドヴェルクスクンスト。すなわち、職人技の芸術。それが力強い美しさを秘める“Handwerkskunst”という言葉の意味であり、ドイツ語の美しさを示す素晴らしい一例でもある。

余談はさておき、ドイツ人の友人たちと私がともに育ったウィスコンシン州の豊かな伝統に謝罪したい。私はランゲのハンドヴェルクスクンストのリリースにはいつも困惑させられてきた。私がランゲに魅了されてきたのは、控えめで厳格、視覚的にも“ゲルマン的”とさえ言える、静かな佇まいのなかに特別な要素を秘めた時計だからだ。最近リリースされたオニキスダイヤルのランゲ1などがまさにそれに該当する。ハンドヴェルクスクンストはランゲのほかの時計とはあまりに異なっているように見えていたのだが、かつてはその理由がわからなかった。しかし今回のハンドヴェルクスクンストを目の当たりにして、すべてが腑に落ちたのである。

ダトグラフの25周年に際して私は何か大きな変化を期待していた。ダトグラフ・パーペチュアル・トゥールビヨン “ルーメン”は確かにそれにふさわしいモデルだ。62万ドル(日本円で約9130万円、なお日本での定価は要問い合わせ)という価格に加え、14.5mmの厚みがあるという点でも“ビッグ”な存在だ。もうひとつの限定版として登場したブルー文字盤の125本限定ホワイトゴールド(WG)製 “アップ/ダウン”は、やや期待外れに感じた。確かに美しい時計であり、このシリーズでは初めての試みではあったが、25周年記念としては新たなムーブメントなどが期待されるところだ。新しいケースと文字盤は魅力的ではあったものの、惜しい機会損失に思えた。正直なところ、アップ/ダウンは私の好みのダトグラフではない。よりバランスの取れた文字盤を持つオリジナルのダトグラフの、クリーンでクラシックな魅力を好む。

その点では、この新しいハンドヴェルクスクンストのほうが魅力的だ。新しいRef.405.048Fはアップ/ダウンの既存のケースサイズである41×13.1mmを維持しつつ、アップ/ダウンのレイアウトを廃し(パワーリザーブ表示は6時位置から取り除かれ)、ケースはイエローゴールド(YG)製で仕上げられている。美しいトレンブラージュ仕上げの文字盤についてはのちほど触れるが、ランゲを手にして最初の30秒以内に裏側を確認しないというのは、本来の楽しみ方とは少し異なるものだろう。

技術的な面に触れると、本作にはA.ランゲ&ゾーネ製のCal.L951.8という新しいムーブメントが搭載されている。その系譜は初代ダトグラフに搭載されたCal.L951.1までさかのぼることができる。現行のWG/ブルーダイヤルモデルを含む最新世代では、6時位置にパワーリザーブインジケーターが配置されたCal.L951.6が搭載されている。新しいCal.L951.8では単にその表示を省いただけでなく、ひと目でわかる仕上げへのこだわりが加えられており、その美しさには目を見張るものがある。

過去のハンドヴェルクスクンストや“F.A.ランゲへのオマージュ”と同様に洋銀のムーブメントプレートにはフロスト加工が施され、質感とコントラストが強調されている。話は逸れるが、洋銀の色味は光によって大きく変わって緑がかることがあり、撮影後の修正がほぼ不可能なため、ランゲのムーブメントを撮影するのはこれまで難儀してきた。フロスト加工によりムーブメントの撮影が容易になっただけでなく、手作業によるプレートの仕上げやエッジの面取りが、通常のダトグラフよりも一層際立っている。

ランゲのテンプ受けに施された手彫りのレリーフはいつ見ても美しく、正直なところ時々その美しさを見慣れたもののように見過ごしてしまうこともあるが、それでも“特別な魅力”がある。この新作のエングレービングはほかのランゲ作品に比べてややシンプルではあるものの、フロスト加工のプレートに映える単純化された蔓模様は平均的な彫りよりも美しく、贅沢な印象を与えている。

最後に、クロノグラフレバー(およびその他いくつかの部品)はすべて特別な手作業で仕上げられている。従来モデルにおけるこれらの部品にはサテン仕上げが施されており、適度な艶と輝きがあったが、ダトグラフ・ハンドヴェルクスクンストのクロノグラフレバーは完全にブラックポリッシュで仕上げられている。下の写真でその鏡面効果を確認できるだろう。また上の写真には部屋の暗さや影を反射して漆黒に染まるレバーの姿が見て取れる。この工程の狙いは、波や凹凸のない完璧に平らな表面を作り出すことにある。表面に凹凸があると光が斜めに反射してしまい、鏡面仕上げによるフラットで美しい反射が台無しになるからだ。

一般的には油に懸濁されたダイヤモンドダストを含む研磨剤を塗布した、滑らかで平らな亜鉛板や錫板の上で研磨する技法が用いられる(ただし、ランゲがどのようなプロセスを採用しているかは正確にはわからない)。ネジの頭を黒く磨くのに1本あたり3分から20分かかると言われているので、クロノグラフレバーの研磨にどれだけの時間がかかるか(しかも操作性を損なわないようにすることも考慮して)想像してみて欲しい。

そしてケースだ。このモデルは39mmサイズで“イエロージャケット”の愛称を持つダトグラフ Ref.403.041以外では初のYG製ダトグラフである。この点だけでもコレクター層への配慮が感じられるが、“イエロージャケット“のブラック文字盤が省かれたことで、パンチとコントラストがやや薄れたように感じるかもしれない。しかしそこにはまた別の新たな魅力が備わっている。

ああ、文字盤について触れるのを忘れていた。この文字盤こそが、過去のハンドヴェルクスクンストのリリースに対して私が距離を置いていた理由だったのかもしれない。文字盤のなかには1815ラトラパント・パーペチュアルカレンダーに見られるエナメルの星模様のように、手仕事の技術や大胆なデザインを取り入れたものもある(これも少し風変わりすぎて、私の好みには合わない)。確かにそれと比べると、“イエロージャケット”の黒い文字盤ははるかに見やすい。しかし、トライポフォビア(通称、集合体恐怖症)のような症状がある人には、このトレンブラージュ仕上げの文字盤は見ていて少し気持ち悪いかもしれない。この文字盤の仕上げは、以前1815トゥールビヨン・ハンドヴェルクスクンストにも使われていた。しかしこの一見シンプルで奇妙なテクスチャは、近くで見ると驚くほど印象的だ。

文字盤全体はYG製で、文字盤のメイン部分はブラックロジウム仕上げ、インダイヤルにはライトグレーのロジウム仕上げが施されている。インデックスとローマ数字はYGの植字だが、それ以外の部分はすべて文字盤上に浮き彫りにされている。“Made in Germany”の文字やすべてのタキメータースケール、サブダイヤルの文字もすべてレーザーで彫刻された浮き彫りだ。また、テクスチャ部分はすべて手作業によるトレンブラージュ仕上げで刻まれている。

以前はこの魅力がわからなかったが、完成度の高いパッケージとして新しいハンドヴェルクスクンストは驚くほど魅力的だ。時計愛好家として成長し、視点が成熟したからかもしれない。今でもプラチナ(Pt)製のブラックダイヤルという、クリーンで洗練されたランゲの大胆な渋さが好きだが、この新作の柔らかな表情には完璧に近い美しさがある。“クワイエットラグジュアリー”がもはやクールではないことは理解しているし、そもそも“クール”と言われるものに敏感だったこともないが、この時計はクワイエットラグジュアリーでありつつ、非常にクールでもある。価格は21万7600ドル(日本円で約3328万円、複数の情報筋による)なので、それだけの価値があることが期待される。そしてこの時計は期待を裏切らない。ただし大胆で特にクールな別の時計を見たい方のために、もう1本別の時計を簡単に紹介しよう。

ニューヨークのランゲ・ブティックを訪れてハンドヴェルクスクンストの写真を撮影した際、一部の人が“究極のダトグラフ”と考えるであろう、唯一無二のダトグラフを目にする機会もあった。多くのランゲコレクターにとって、ユニークピースと呼ばれる1品は手に入れられるもののなかでは最上級とされる。例えばトゥールボグラフ・パーペチュアル “プール・ル・メリット”のユニークピースは小売店ドゥバイール向けに作られたもので、201個のバゲットダイヤモンドがダイヤモンドケースとブレスレットにセッティングされ、120万ユーロ(日本円で約2億円)の値がつけられた。また2018年にはSS製のランゲ&ゾーネ 1815 “オマージュ・トゥ・ウォルター・ランゲ”が最終的に85万2525ドル(日本円で約1億3000万円)で落札された。加えて2022年にはWG製の1815 クロノグラフ “ハンプトンコート・エディション”がオークションで105万8500スイスフラン(日本円で約1億8600万円)で落札されている。この新しいハンプトンコートの時計は11月9日にジュネーブでフィリップスによりオークションにかけられる予定である。まさに究極中の究極とも言える1品だ。収益は英国の慈善団体であるキングス・トラストに寄付される。

残念ながらこの時計は保護用のビニールで包まれており、磨き上げられたケースに傷や指紋がつかないようになっていた。念のため言っておくと、これはサンプルやプロトタイプではなく、オークションで落札されたのちクライアントに届けられる本物の時計だ。そのため、保護包装が施されていても手袋を着用する必要があったのだ。おそらく彼らはグレーの文字盤を除けば、この時計の主役とも言えるブレスレットを特に気にしていたように思う。ケースはWG製だが、WG製のブレスレットは特に磨きが難しいため、ビニールを剥がさずに保護しているのは理解できる。

ブレスレットは、ランゲがダトグラフ・パーペチュアル(Pt製)などいくつかのアイテムのオプションとして提供していたものと基本的に同じである。しかしこのWGのウェレンドルフ製ブレスレットは過去の在庫の余りで、ハンプトンコートの新作に取り付けられたものだと聞かされた。さあ最後にケースバックだ。ムーブメントの最高の瞬間を捉えることはできなかったが、それはハンプトンコートのロゴが刻印されたハンターケースバックのせいだ。世界で最もクールなダトグラフのひとつであるこの時計のムーブメントは、オークションで落札した人のために取っておこう。

ウブロからビッグ・バン ウニコ ノバク・ジョコビッチモデルが新登場。

ウブロは37歳のテニスチャンピオン、ノバク・ジョコビッチ(Novak Djokovic)氏とのコラボレーションによるビッグ・バン ウニコを発表した。この限定モデルはグランドスラムでの優勝24回を誇るジョコビッチ氏との共同デザインであり、パリのヴァンドーム広場に面した歴史的な邸宅、ホテル・ドゥブローでお披露目された。世界中のジャーナリストやゲストが集まるなか、この時計はスイスの時計ブランドらしく、午後8時きっかりにカーテンが上がる形でお披露目された。その場ではルイナールのシャンパンが注がれ、華やかなゲストたちがバックボードの前で最高のポーズを披露していた。しかしスポーツウォッチのコラボレーション発表会としては少々豪華すぎると感じられるほどのきらびやかな雰囲気だった。とはいえ、これこそまさにラグジュアリー×スポーツパートナーシップという業界構造の典型なのだ。これについてはまた後日触れることにしよう。

Hublot Big Bang Unico Djokovic
 ウブロはセルビアのテニス界の伝説、ノバク・ジョコビッチ氏とのパートナーシップを3年間続けており、今回の発表は両者にとって初めての限定モデルとなる。この42mmの時計は、ジョコビッチ氏が2023年の記録破りのシーズンで使用したヘッド製ラケットや、ラコステのポロシャツのリサイクル素材をケースとベゼルに採用している。いわば“汗まみれのメモラビリア”の究極形だ。この素材は青い繊維とカーボンの破片が散りばめられた複合素材であり、独特の迷彩模様を生み出している。時計のディテールには、テニスや彼のキャリアをさりげなく称える要素が取り入れられている。ウブロの象徴的な“H”型ネジはテニスボールの形を模したデザインに変更され、黄色いクロノグラフプッシャーはテニスボールの色をほうふつとさせる。さらに秒針と回転ローターには彼のロゴがあしらわれるなど、ジョコビッチ氏へのオマージュが至るところに散りばめられている。

Big Bang Unico
 ビッグ・バン ウニコ ノバク・ジョコビッチは、エラスティックストラップを装備し、わずか49.5gという驚異的な軽さを実現。この軽量化は、従来のサファイアクリスタルに代えて強化ゴリラガラスを使用した点も大きく寄与している。またムーブメント自体も再設計され、主要素材にアルミニウムを採用。同ムーブメントは迷彩柄にマッチするよう、ライトブルーまたはグレーに陽極酸化処理が施され、従来のモデルと比べて27%の軽量化を達成している。さらにアルミニウムはミドルケース、サブベゼル、ベゼルラグ、プッシャー、リューズ、ケースバックを含むさまざまなケースパーツに使用されている。新しいウニコはテニスボールよりも軽いが、11.9gのRM27-05 ラファには及ばない。しかし価格を考えれば、このビッグ・バン ウニコ ノバク・ジョコビッチは723万8000円(税込)で、RM27-05 ラファよりも110万ドル(日本円で約1億7000万円)も安いのだから、それ以上は言わないでおこう。

Dial and Watch Big Bang Unico
 鮮やかなブルーのこの時計には、4種類のストラップが付属している。ウブロのワンクリックシステムで取り付けられるエラスティック素材のスウェットバンド、青いアルミニウム製スポーツバックルを備えたベルクロストラップ、白いラバーストラップ、そしてラコステのストラップだ。確かに723万8000円(税込)という価格は高めだが、安心して欲しい。購入時にはラコステのポロシャツとリストバンドもセットになっている。

我々の考え
このリリースを見て思い出したのは、数週間前に聞いたBusiness of Fashionのポッドキャストだ。そこで話されていたのは、近年、スポーツがファッションブランドとのパートナーシップの豊かな土壌となっているという事実だった。3年前、ディオールとパリ・サンジェルマンの提携は比較的新鮮だったが、今ではサッカー、フォーミュラ1、その他のスポーツに少しも関与していないラグジュアリーブランドを探すほうが難しいほどだ。これらの契約はますます複雑化しており、ブランドがアスリートやチーム、さらにはリーグ全体にわたって、競技場内外で装備を提供することが一般的になりつつある。

Novak Djokovic
 テニスは、1970年代後半にロレックスがグランドスラムのスポンサーを始め、1980年代に(アンドレ・)アガシ氏がエベルと提携した頃から、ブランドパートナーシップの場として成熟してきた(詳細はこちら)。そして今回のウブロの時計については、持続可能性への取り組みや、コート内外で使いやすい軽量素材といった要素がメッセージの中心になるだろう。しかし、この時計を実際に売る力となるのはノバク・ジョコビッチという有名人の存在だ。このコラボレーションは、いまや当たり前となったコラボスタイルのマーケティングを見事に実践している。時計愛好家以外にはまだ比較的知名度が低いウブロにとって、ジョコビッチの名はビッグバン・ウニコを知るきっかけを作る存在となるのだ。

Big Bang Unico Djokovic on wristband
 ウブロはコラボレーションが大好きだ。特に誰もが知る有名アスリートとのスポーツコラボは、時計ブランドの夢の実現とも言える“親しみやすい”タイプのコラボだ。しかしウブロ自体は決して“親しみやすい”ブランドとは言えない。スイス時計界の異端児として知られるウブロは、その派手なスタイルと風変わりなパートナー選び(ネスプレッソ、ダニエル・アーシャム氏、村上 隆氏など)において、自由奔放さを誇示してきた。そんなウブロにしては、このジョコビッチ氏とのコラボレーションはむしろ安全策に思える。さらに掘り下げれば、このコラボはジョコビッチ自身もまたテニス界で“異端児”的な存在であることを考えると、ある意味で適切だ。ただしこの時計自体もどこか無難な印象を受ける。涼しげなブルーの色合いは、このウニコを比較的受け入れやすいものにしている。確かに一般的なクロノグラフと比べれば目立つが、ウブロの通常のコラボモデルに比べれば大人しい仕上がりだろう。この新作は、最近就任したCEOのジュリアン・トルナーレ(Julien Tornare)氏の下で、ウブロが“抑えめ”な方向に舵を切り始めた兆候なのだろうか? それとも“厳しい時代だからこそ、奇抜さを控えるべき”という段階に入ったということだろうか? または最近話題になったAP×KAWSコラボの影響で、今週は何を見ても控えめに見えてしまうだけなのだろうか?

基本情報
ブランド: ウブロ(Hublot)
モデル名: ビッグ・バン ウニコ ノバク・ジョコビッチ(Big Bang Unico Novak Djokovic)
型番: 441.QKB.5120.NR.DJO24

直径: 42mm
厚さ: 14.5mm
ケース素材: マットブルーのリサイクルコンポジット(ノバク・ジョコビッチ氏のポロシャツとラケットを使用)
文字盤: マットスカイブルー
インデックス: アプライド
夜光: あり
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: テニスリストバンド、ブルーのエラスティックストラップ、ブルーのベルクロファブリックストラップ、ホワイトラバーストラップの4種類が付属

Big Bang Unico movement
ムーブメント情報
キャリバー: HUB1280
機能: 時・分表示、スモールセコンド、日付表示、クロノグラフ
直径: 30mm
厚さ: 6.75mm
パワーリザーブ: 約72時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 43

ヴァシュロン・コンスタンタンは、ヒストリーク 222のステンレススティール(SS)モデルを発表した。

この新モデルはオリジナルと同じ絶妙なサイズ感(37mm径、厚さ7.95mm)、同じムーブメント、そしてヴィンテージな意匠をそのままに、よりカジュアルで手ごろな価格のSS仕様となっている。価格は475万2000円(税込)で、文句のつけようがなく素晴らしい。

Vacheron 222 Steel
今年は時計業界において記念すべきアニバーサリーイヤーとなっている。スーパーコピー時計n級品 代引きブランド創立記念から象徴的なモデルの周年まで、さまざまな祝賀行事が連なるであろうことがすでに約束されているのだ。しかしそのなかでもヴァシュロン・コンスタンタンの270周年という歴史的節目は群を抜いている。もちろん今後には華やかなパーティや盛大なイベントが控えているのだろうが、ヴァシュロンはすべてを後回しにし、時計マニアたちが熱望していた注目の新作をなんとプレスリリースひとつで発表するという大胆な手法を選んだのだ。それが、オーヴァーシーズの前身モデルである「ジャンボ」222のSSバージョンである。

2024年の末、幸運にもヴァシュロン・コンスタンタンからこの時計を1日以上にわたって試着する機会をもらった。そのため多数の写真とともに、この時計についての考察をここに記すことができる。ヴァシュロンファンが長年求めていた要素はいくつかあり(たとえば、マット仕上げの文字盤やデュアルタイム機能付きのオーヴァーシーズなどが個人的には強く望むところだ)、そのなかでもSS仕様の222は特に待望されていたモデルだ。そして今回、その期待に見事に応える一品が誕生したと言えるだろう。

Vacheron 222 Steel
ヴァシュロン・コンスタンタンが1977年に発表したオリジナルの222は、同ブランドの222周年を記念して登場した。ヨルグ・イゼック(Jorg Hysek)氏がデザインしたこのモデルは、それまでのヴァシュロンのデザイン言語から大きく逸脱したものであり、いわゆる“ホーリートリニティ”の一角を成すケース一体型モデルとしては最後に発表された。しかしほかのモデルと異なり、222はブランドのカタログに継続して掲載されることはなかった。そのため、2022年にヴァシュロンがヒストリーク 222のイエローゴールド(YG)版を発表した際にも、業界内では特に驚きはなく迎えられた。これは同モデルの45周年を記念したリリースであり、やや中途半端な周年ではあるが、十分に節目として認識される年数だ。ヴィンテージにインスパイアされた復刻版が登場するには適したタイミングだった。しかし時計愛好家たちはこのリリースに興奮しつつも、すぐにSS製のバージョンを求める声を上げた。

1年後、私はヴァシュロンの関係者にSS版のリリースについて尋ねたが、「製品開発は7年周期で行う」という説明を受けた。また、ブランドとしても222の需要がこれほど高いとは予想していなかったため、その時点でSS版の開発計画はまだなかったとのことだった。ただし、そのうち登場するだろうというニュアンスは感じ取れたものの、すぐには期待できないという印象だった。だが実際には、それほど長く待たされることはなかった。

Vacheron 222 Steel
「ジャンボ」222を際立たせている重要な要素のひとつに、極薄のムーブメントにより時計全体が薄型となっている点が挙げられる。37mm径、厚さ7.95mmというサイズ(1977年のオリジナルの7.2mmより、少し厚い)はロイヤル オーク “ジャンボ”(39mm径、厚さ8.1mm)やノーチラス Ref.5711(40mm径、厚さ8.6mm)とは異なるバランスを持つ。そしてこれら3種の現行モデルはいずれもヴィンテージのサイズ感をほぼ忠実に再現しているが、ヒストリーク 222の直径はほかのモデルよりも一層ヴィンテージらしさを感じさせる。

現代において、36mm径や37mm径のケースをフラッグシップモデルに据えるブランドは少ないが、そうした選択が222をより魅力的にする要因となっている。オリジナルモデルからの変更点もいくつかあり(YGのヒストリーク 222でも確認されたように)、ケース一体型ブレスレットのバタフライ式デプロワイヤントクラスプや、シースルーのケースバックがその例である。

Vacheron 222 Steel
この極薄のサイズ感は、装着時の快適さにも寄与している。もちろんYG版の222よりも軽量であり、特にホワイトメタル、具体的にはSS製の時計を好む人(私もそのひとりだ)にとっては、物理的にも心情的にもこちらのほうがしっくりくるだろう。ケースの防水性能は50mであり、より本格的なスポーツウォッチを求めるのであれば、引き続きオーヴァーシーズを選ぶのが賢明だろう。しかしこの時計の魅力は機能性よりも、その雰囲気や身につける楽しさにあると言える。

Vacheron 222 Steel
その他のディテールにおいても、この時計はヴィンテージモデルと見分けがつかないほどの仕上がりとなっている。新品のマットブルーのダイヤルにより少しパンチが効いた印象を受け、傷や磨き痕がないことでシャープな印象を与える。また、フルーテッドベゼルは他ブランドの“ジャンボ”モデルとは一線を画す特徴だ。なお日付窓は、文字盤と色が一致していない(これについては別の記事で詳述する予定だ)。加えて、右下のラグにはヴァシュロン・コンスタンタンのシンボルである金色のマルタ十字が施されている。

Vacheron 222 Steel
ムーブメントはシースルーバックから鑑賞でき、これはYGのモデルと同様だ。ムーブメントには2022年から搭載されているものと同じ、ジュネーブシール認定のヴァシュロン製Cal.2455/2が使われている。このムーブメントは2007年に発表されたCal.2455の進化版だが、正直に言うとやや古さを感じるスペックだ。振動数は2万8800振動/時で、オリジナルモデルの1万9800 振動/時に比べて向上している。パワーリザーブは40時間だが、この点は突出したスペックではない。しかし直径26.2mm×厚さ3.6mmという薄型設計の自動巻きムーブメントは、ヴァシュロンが薄型時計を作るうえで最適な選択であることは間違いないだろう。

Vacheron 222 movement
数日中にはヴァシュロン・コンスタンタンの新作、ヒストリーク 222のHands-Onレビューでさらに詳しくお届けし、YG製の復刻モデルとの比較も行う予定だ。それまでのあいだ、詳細はヴァシュロン・コンスタンタンの公式ウェブサイトをご覧いただきたい。​

Vacheron 222 Steel
基本情報
ブランド: ヴァシュロン・コンスタンタン(Vacheron Constantin)
モデル名: ヒストリーク 222
型番: 4200H/222A-B934

直径: 37mm
厚さ: 7.95mm
ケース素材: SS
文字盤色: ブルー
インデックス: ホワイトゴールド製のインデックスと針
夜光: スーパールミノバ
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: ケース一体型のSS製

Vacheron 222 Steel
ムーブメント情報
キャリバー: 2455/2
機能: 時・分表示、日付表示
直径: 26.2mm
厚さ: 3.6mm
パワーリザーブ: 40時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 27
クロノメーター認定: なし
追加情報: ジュネーブ・シール認定

価格 & 発売時期
価格: 475万2000円(税込)
発売時期: 発売中
限定: 通常モデル、ただしヴァシュロン・コンスタンタンのブティック限定

Y-3(ワイスリー)は、2025年秋冬の新作ユニセックススニーカー「Y-3 A3 コントロール(Y-3 A3 CONTROL)」が新登場。

レトロシルエットのスニーカー「A3 コントロール」
「Y-3 A3 コントロール」66,000円
「Y-3 A3 コントロール」66,000円
2002年に登場した、スーパーコピーのアディダスの「A3 コントロール」。当時の最先端テクノロジーであったA3クッショニングを搭載し、着地時の衝撃を抑え優れた履き心地を実現した1足だ。
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「Y-3 A3 コントロール」66,000円
「Y-3 A3 コントロール」66,000円
「Y-3 A3 コントロール」は、Y-3の視点を通して復刻したモデル。2025年秋冬は、落ち着いたオフホワイトをメインにブラックを組み合わせたモノトーンと、ブラックにレッドを加えた2色を展開する。

シルエットは、これまで同様レトロな見た目を継承。アッパーには上質なレザーとスエードを用いた。また、ヒールにはY-3のロゴを刺繍を、シュータンにはシルバーのリフレクターを施すなど、細かな部分にまでこだわりを詰め込んでいる。

【詳細】
「Y-3 A3 コントロール」66,000円
発売日:2025年7月15日(火)~順次発売予定
販売店舗:Y-3直営店、指定の小売店、公式オンラインストア、ゾゾタウン
サイズ:22.5~29.5cm

【問い合わせ先】
アディダス ファッション グループ ショールーム
TEL:03-5547-6501